『銀の匙 Silver Spoon』 荒川弘
掲載雑誌「週刊少年サンデー」(小学館)
内容紹介
寮があるという理由で大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学した八軒勇吾は、悪戦苦闘の日々をおくりながら賢明に悩んで考える。八軒にとっては何もかもが初体験だけど、仲間も楽しみも増えた高校生活。しかし時折、農業の厳しい現実にもぶつかる…
進路を考える時期になり、八軒は思い切って起業することを決意。「人の夢を否定しない人になりたい。」そんな思いから「絆の農業ビジネスプロジェクト」を立ち上げ、手探りでひとつひとつ実行してみる…
そんな農業高校生・八軒と仲間たちの、汗と涙と泥まみれの酪農青春グラフィティ!!
(公式サイトより引用)
管理者より
農業青春漫画と言えば偉大な先駆者『もやしもん』を思い出す方も多いと思いますが、もやしもんが菌・発酵メインなのに対して、銀の匙は畜産がメインのお話です。
主人公の八軒は受験戦争から逃げて農業高校に入学した素人で、他の生徒は実家が農業をしている子供達ばかりです。
何も知らない八軒は畜産を学ぶ中で、経済動物と付き合うことの過酷さ(体力的、金銭的な辛さ)を知ります。しかしそこで素人だからこそ逆に「それはおかしい」と一歩踏み出そうとする、『ヒカルの碁』でヒカルが途中から囲碁部を辞めて院生になったように、物語が農業高校の枠を超えていく所からこの漫画の面白さが爆発します。
個人的に、この漫画(というよりも荒川弘の作品)の根底には「自分を一番大切にする」というテーマがあると思っています。(もちろんそれは手を抜くという意味ではありません)
お金や経営の問題に子供(青年)が真っ向から挑む作品はなかなか無いと思います。
ヒロインの御影ちゃんも擦れていなくて本当に良い子だなと思いました。
綺麗ごとじゃない、けど、読んでいて前向きな気持ちになれる美しい作品です。
また馬術部の大会描写も綿密で、馬術経験者の方にも特におすすめします。
管理者イチオシの漫画です。
余談ですが、畜産や動物取扱業に対して世間では「生命を育むことの美徳」にばかり焦点が当てられ、その過酷さと残酷さに蓋をされることが多いです。(そもそも糧とするために殺すことを残酷と呼ぶこと自体おかしいことですが)
それだけでなく「我々は血を見なくて済んでいるだけ」という事実を歪曲して、「殺生など存在しない(自分に関わりない)」と認知している人達も残念ながら存在します。血もお金も、汚いものではありません。子供から遠ざけるものでもありません。
そういう意味でも私は、多くの人に荒川弘の農業哲学に触れてほしいと思っています。(個人的な願望です)
というわけで同じく荒川弘の『百姓貴族』もオススメします。内容はとてもコミカルなエッセイです。
参考画像(画像クリックで引用話数表示)






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