B級ランク戦ラウンド3は那須隊の戦略によりチームが分断されてしまいます。
茜、熊谷 vs 遊真 vs 村上の西岸アタッカー対決
那須 vs 修、千佳 vs 来馬、太一の東岸ガンナー対決
No.4アタッカーの村上の鋭い攻めと、那須さんの縦横無尽な変化弾(バイパー)が猛威を振るいます。遊真と修に勝機はあるのか!?
…まずは11巻ラストのおさらいから。
第二ラウンド終了時点でB級8位になった玉狛第二が戦うのは9位の鈴鳴第一と13位の那須隊。
その前哨戦ともいえる鈴鳴第一のNo.4アタッカー村上鋼と遊真の個人ランク戦、10本勝負で遊真は前半4:1と大きくリードしますが、15分の休憩の後の後半戦では鋼に5本連取され敗北してしまいます。
その理由は鋼のサイドエフェクト「強化睡眠記憶」によるもので、前半戦で見た遊真の動きをわずか15分間の仮眠で鋼は完全に学習し、後半で対応していたのです。
何が恐ろしいかというと、この個人ランク戦のたった5戦で覚えられてしまった動きが”この先ずっと”鋼には通用しないということです。二度同じ手は喰わないという、それこそ少年漫画のような強敵です。
ただし鋼もこのサイドエフェクトに伴う苦労が幼い頃からあって、ボーダー内でも”荒船に戦い方を教えてもらった鋼が荒船より強くなってしまったので荒船がアタッカーを辞めてスナイパーに転向した”という噂がたってしまいました。しかし真相はそのようなことはなく、荒船に対する鋼の誤解を解くために動いた回想での来馬隊長の仏ぶりがすごく良かったです。
「近界民(ネイバー)と戦うときは味方同士なんだから きっとみんな「鋼が強くてよかった」って言うと思うよ」
これが大規模侵攻での鋼の活躍につながったと考えると、感慨深いですね。
そして一方で那須隊ですが、隊長の那須は個人ポイント8000点以上持つマスタークラスの射手(シューター)という強者で、しかも今回は一番順位の低い那須隊が地形選択権を持っているため、那須隊が有利なマップで勝負を仕掛けることができます。
修は那須隊が鋼を封じるために中距離の射撃戦を仕掛けてくるだろうと想定し、試合が開始したら合流を優先するという考えで試合に臨みます…が、選ばれたステージ「河川敷」の天候は”暴風雨”ですべての隊が濁流の川によって分断されてしまいます。
動き出しは那須隊が早く、西岸の熊谷と茜がまっすぐに橋を目指します。
もちろんどのチームも合流が最優先事項なので鋼と遊真も橋を目指します。
しかし遊真は特に転送位置が橋から遠かったため、このままでは玉狛第二が合流する前に那須隊に先に橋を渡られ合流されてしまいます。もしその後に橋を落とされでもしたら、那須隊だけが唯一東岸で部隊の合流を果たし、鋼と遊真のエース二人が西岸に残されてしまうという最悪のケースになってしまいます。
千佳の砲撃によって橋を落とし、全てのチームが合流できないようにすることでした。
那須隊の合流を防ぐことができた反面、修と千佳も遊真と合流することはできません。
ところでこの爆発のエフェクトがかっこいいですよね。この矢印の先に出ている衝撃波ならぬトリオン波というかなんというか、こういうのすごく好きです。
これによって戦いは川を挟み2局に分断されることになりました。
茜、熊谷 vs 遊真 vs 村上の西岸アタッカー対決
那須 vs 修、千佳 vs 来馬、太一の東岸ガンナー対決
…というのが11巻ラストまでのお話ですが、この12巻は西岸のアタッカー3人の激しい競り合いから始まります。
三つ巴のこの状況、熊谷隊員が少し押され気味になりますが、一刻も早くこちらを片付けて(泳いででも)東岸に行きたいという鋼の踏み込みを利用し、熊谷は遊真を挟み撃ちする形に上手くもっていきます。
弾かれた遊真を茜がライトニングで狙撃しますが、これを読んでいた遊真はグラスホッパーでかわします。
「そこか」
遊真は茜に狙いをつけて向かいます。この場面、茜が自発的に緊急脱出(ベイルアウト)を使って逃げ切れば遊真の得点を阻止することが可能ですが、茜は遊真を迎え撃つことを選びます。
なぜなら橋の爆破用に持っていた炸裂弾(メテオラ)をトラップとして仕掛けておいたからです。
しかし遊真はその策をさらに利用し、茜を撃破します。
このかわし方を見て、遊真は本当に年季が入った戦い方をするなーと思いました。流石エースです。
援護を失った熊谷も鋼のレイガスト(シールドモード)を利用した受け流し(これが何気にすごいw)によって態勢を崩され、片腕を失います。
しかし熊谷隊員も片手を失ったハンデを、炸裂弾(メテオラ)を使うことでカバーします。まともにやっては鋼の剣速に追いつけず捌ききれないので、メテオラを細かく分割して打ち込み、鋼の足を止めさせようとします。
このいつもと違う那須隊二人の戦いぶりに、解説の三上、太刀川が「気持ちの強さと勝敗」について少し議論することになります。
これがなかなか面白い、というかワールドトリガーの世界観をよく表していると思います。
総合1位の太刀川は「最終的に勝敗を分けるのは気持ちでなく実力」という実力主義の世界を認める一方で、気持ちの強さも否定していないんです。
だってそうですよね、勝負するのが人間同士である以上、意気込むのは当たり前なんですよ。でも勝負は気持ちの強さ”だけ”ではどうにもならない、実力がすべてだから。かといってその意気込みを否定する必要もないんです。
冷酷な勝負の世界で生きる人間の熱い言葉だと思いました。この二つは矛盾しないというのは僕も賛成です。
今回の熊谷と鋼の勝負でも、さすがNo.4アタッカーである鋼は熊谷のメテオラを”付け焼き刃”と言いレイガストを使って看破します。
そして河川敷を登ろうとする鋼は遊真と対峙します。
遊真は茜を落とした後、川を渡らずに鋼と”遊ぶ”ことを選んだのです。
一方で東岸では激しい射撃戦が繰り広げられています。
味方二人を落とされ孤立した那須さんですが、リアルタイムに弾道をひいた変化弾(バイパー)による「鳥籠(とりかご)」と呼ばれる全方位攻撃…とさらにその鳥籠と見せかけての一点集中砲火を使い分けて鈴鳴第一の来馬と太一をガンガン削っていきます。
修は千佳に慎重策を取らせたのと鈴鳴第一と反対側に位置取りしたことが功を奏してあまり狙われずに済んでいますが、逆に言えば相手にされていないとも言えます。
そして西岸の鋼と遊真のエース同士1対1の対決、遊真の「もぐら爪(モールクロー)」や「枝爪(ブランチブレード)」といったスコーピオンを使った技の数々を鋼は受けきり、レイガストを盾だけでなく攻撃にも利用しつつ弧月で鋭い攻めを見せます。
この鋼の盾と剣を使うスタイルがすんごくカッコいいんですよね。(11巻で熊谷の前に弧月を抜きながら現れる一コマとか)
確かに言われてみればガンダムっぽい…(笑)
「鋼が一度見た技は通用しない」=「誰かが一度でも鋼に使った技は通用しない」ということですから、鋼の剣には今までのボーダー内での戦いの経験がすべて乗っているということになります。
しかし遊真だって負けていません。
近界(ネイバーフッド)にいた頃から習慣にしていたレプリカとの感想戦、鋼との模擬戦の後も遊真は一人で対策を練っていたのです。(この遊真の表情がすごく良いですね)
「有利な部分で勝負する」「不利な部分では戦わない」
鋼と遊真の勝敗は、遊真が仕掛けた”攻めのグラスホッパー”から始まる1セットで決まります。
ここが12巻一番の見どころだと思います。
西岸の戦いが終わり東岸の射撃対決もクライマックス、変化弾(バイパー)と炸裂弾(メテオラ)を合成させた「変化炸裂弾(トマホーク)」によって太一を落とした那須は来馬を攻め落とそうとします。
「人型近界民(ネイバー)に比べたら…那須さんなんてかわいいもんだ!」
実はこのコマよく「那須さんなんてかわいいんだ!」とコラにされているのですが(笑)、この最後の最後で大規模侵攻での経験を効いてくるんですね。
ここのマップ画面の的中エフェクトも小気味良い…今回はこういうのばっかり紹介していますね。
果たして結局誰が東岸で最後に生き残るのか、そして最終的な勝利チームは…読んで確かめてください。
さて模擬戦が終わった一方で、遊真たちはある用事でボーダー本部へ行くことになります。
そしてさらにある人物が玉狛支部を訪れます。
その訪問を皮切りに三雲隊に三者三様の新たな出会いが待ち受けます。
そして次のランク戦は…またまた激戦の予感、それは次の13巻で。